来年の目標は、今年の延長ではなく、数年先の「なりたい姿」から逆算して立てると、1年の行き先がはっきりします。
年末が近づいて「来年こそは」と考えはじめたものの、出てくるのは「今年より少しがんばる」ような目標ばかり。手帳の最初のページに書いた目標を、2月にはもう思い出せなかった。何のためにその目標を立てたのか、自分でもよくわからなくなっていた。そんな経験がある人は少なくないはずです。
この記事では、今年の振り返りで自分を知る材料を集め、なりたい姿を描き、そこから来年の目標と最初の一歩を決める4ステップと、なりたい姿・来年の目標・最初の一歩をセットにした来年の目標の例文20を紹介します。
来年の目標は、なりたい姿から逆算して立てる
来年の目標を考えるとき、多くの人は今年の自分を起点にします。「今年は月に1冊読めたから、来年は2冊」「今年は残業が多かったから、来年は減らす」。こうした目標は立てやすい一方で、今年の自分を少し動かしただけなので、何のための目標なのかが見えにくくなります。理由が見えない目標は、1月の慌ただしさのなかで後回しになっていきます。
そこで、起点を今年ではなく、数年先に置きます。3年後、5年後に「こういう毎日を過ごしていたい」「こういう自分でいたい」というなりたい姿を先に描き、そこへ向かう道のりのうち、来年の終わりにどこまで近づいていたいかを来年の目標にします。なりたい姿から逆算した目標は、「なぜこれをやるのか」の答えを最初から持っているので、迷ったときに戻る場所があります。
では、今年の振り返りは何のためにするのか。今年の振り返りは、目標をそのまま延ばすための材料ではなく、自分を知り、なりたい姿をより具体的に描くための材料です。自分がどんな場面で心が動き、どんなときに力が出るのかがわかってくるほど、なりたい姿は「なんとなく」から「こういう毎日」へと解像度が上がっていきます。過去から学び、未来を描き、一歩ずつ進む。来年の目標は、この順番で立てます。
1年の振り返りそのもののやり方は1年の振り返りのやり方で、振り返りに使える質問は今年の振り返りにそのまま使える質問30で紹介しています。
年の変わり目は、なりたい姿へ向かい直しやすい区切り
年の変わり目は、なりたい姿に向かって動き出すのに向いた時期でもあります。
アメリカの研究チームは、Googleの検索データ、大学のジムの利用記録、目標を宣言するウェブサイトの登録データを調べました。その結果、「ダイエット」の検索、ジムに通う人の数、目標の宣言はいずれも、新しい年・新しい月・新しい週の始まりや、誕生日・連休明けのあとに増えていました(Dai, Milkman & Riis, 2014)。研究チームは、こうした区切りが過去の自分を前の期間に置き、より大きな視点で自分を見るきっかけになるのではないかと考えています。
ただし、この研究が示しているのは「区切りのあとに始める人が増える」ことで、続くかどうかまでは示していません。勢いを1月の数日で終わらせないためには、なりたい姿と来年の目標に加えて、いつ・どの場面で最初の一歩を踏み出すかまで決めておくことが役に立ちます。「もし〜したら、〜する」という形で行動のきっかけを決めておくと目標を達成しやすくなることは、94の研究をまとめた分析でも報告されています(Gollwitzer & Sheeran, 2006)。
なりたい姿から来年の目標を立てる4ステップ
用意するのは、ノートかスマホのメモと、1時間ほどの時間です。全部を一度に埋めようとせず、ステップごとに1〜3行ずつ書いていきます。
ステップ1: 今年を振り返り、自分を知る材料を集める
まず、今年あったことのなかから、次の3つを書き出します。
- 心が動いた場面: うれしかった、悔しかった、誇らしかった場面
- 力が出た場面: 時間を忘れて取り組めた、人に頼られた場面
- もやもやが残った場面: 本当はこうしたかった、と感じている場面
書いたら、それぞれに「なぜそう感じたのか」を1行ずつ足します。たとえば「後輩に仕事を教えるのが思ったより楽しかった。人ができるようになっていく様子を見るのがうれしかった」。この「なぜ」の部分に、自分が大切にしていることが出てきます。ここで集めたものは、来年の目標そのものではなく、次のステップでなりたい姿を描くための材料です。
ステップ2: 3年後のなりたい姿を描く
ステップ1の材料を見ながら、3年後の自分がどんな毎日を過ごしていたいかを2〜3文で書きます。仕事、暮らし、人との関係、からだ、自分のこと。全部を書かなくてかまいません。いちばん大事にしたいところから書きます。
なりたい姿を描くときに手がかりになるのが、アメリカの精神科医ウィリアム・グラッサーが提唱した選択理論心理学の考え方です。選択理論では、人は次の5つの基本的欲求を持ち、その欲求を満たすために行動していると考えます。
- 生存: 健康で、安心して暮らしたい
- 愛・所属: 大切な人とつながっていたい、仲間の一員でいたい
- 力: 認められたい、役に立ちたい、できるようになりたい
- 自由: 自分で選びたい、縛られたくない
- 楽しみ: 好奇心のままに学びたい、楽しみたい
人生の目的を「幸せになること」だとすると、選択理論の考え方では、幸せとはこの5つの欲求がバランスよく満たされている状態と言えます。そう考えると、なりたい姿を描くときのポイントは、自分はどの欲求を、どのように満たしている状態を描くのかになります。ステップ1で書いた「なぜ」を読み返すと、自分がどの欲求を満たしたときに心が動いていたのかが見えてきます。
たとえば「人ができるようになっていく様子を見るのがうれしかった」という材料は、人の役に立てた(力)と、チームとつながっていた(愛・所属)の2つの欲求が満たされた場面です。そこからは、「3年後、チームの誰かが困ったときに最初に相談される人でいたい。教えることを、自分の仕事の中心に置いていたい」というなりたい姿が描けるかもしれません。最初から完璧な言葉にする必要はありません。仮の1文で十分です。なりたい姿は、毎日のふりかえりで自分のことがわかってくるほど、少しずつ描き直していけます。なりたい姿の描き方は理想の自分になるノートの書き方でもくわしく紹介しています。
ステップ3: なりたい姿から逆算して、来年の目標を1文にする
次に、ステップ2のなりたい姿に向かう道のりのうち、来年の12月にどこまで近づいていたいかを1文にします。これが来年の目標です。
「チームの誰かに最初に相談される人でいたい」が3年後なら、来年の終わりは「後輩2人の仕事の相談に、自信を持って乗れている」くらいかもしれません。来年の目標は「〜を達成する」より、「〜な毎日を過ごしている」「〜と言える自分でいる」のような、状態の言葉で書くのがおすすめです。状態の言葉で書いた目標は、その状態に近い日があるたびに、なりたい姿へ近づいている手応えを感じられます。状態で書く目標の立て方は目標の例文30選で紹介しています。
ステップ4: 最初の一歩を「もし〜なら」で決める
最後に、来年の目標に向けた最初の一歩を、「もし〜したら、〜する」の形で1行にします。「もし」のところには、毎日・毎週かならず通る場面を入れます。
「もし後輩から質問されたら、答えたあとに『ほかに困っていることは?』と聞く」「もし金曜の夕方になったら、今週人に教えたことを1行書く」。このくらい場面が具体的だと、年が明けた最初の週に迷わず始められます。ステップ1で書いた「もやもやが残った場面」で、なぜ動けなかったのかが時間や場面の言葉で見えていれば、その場面を避けるように「もし」を決めておくのも手です。
目標を3つまでに絞る理由
4ステップを進めていると、なりたい姿から逆算した目標の候補がいくつも出てくるかもしれません。それでも、来年の目標は多くても3つまでに絞ることをおすすめします。
目標が5つも6つもあると、毎日「今日はどれをやろう」と迷う時間が増えます。1つが止まったときに、全部が止まったように感じやすくもなります。なりたい姿のなかで、いちばん大事にしたいところに近い目標から選んでください。仕事・暮らし・自分のこと、のように場面を分けて1つずつ選ぶと、3つでも重なりにくくなります。
そのまま使える来年の目標の例文20
場面ごとに、「3年後のなりたい姿」「来年の目標(来年の終わりのありたい状態)」「最初の一歩」をセットにして並べました。なりたい姿の言葉を自分のものに置き換えてから、目標と最初の一歩を直して使ってください。
仕事の目標の例文
| 3年後のなりたい姿 | 来年の目標 | 最初の一歩(もし〜なら) |
|---|---|---|
| 1. チームの誰かが困ったとき、最初に相談される人でいる | 後輩2人の仕事の相談に、自信を持って乗れている | もし後輩に質問されたら、答えたあとに「ほかに困っていることは?」と聞く |
| 2. 自分の専門を、社外の人にも説明できる仕事をしている | 自分の担当の仕事を、人に説明できる言葉で持てている | もし金曜の夕方になったら、今週やった仕事を3行で書く |
| 3. 会議で、方向を決める意見を出せる人でいる | 会議で、自分の意見を毎回1つは言えている | もし会議の資料が届いたら、言いたいことを1行メモしておく |
| 4. 仕事と家族の時間を、どちらも大事にできている | 定時で帰れる日が、週の半分以上ある | もし月曜の朝になったら、今週の締め切りを先に書き出す |
暮らしの目標の例文
| 3年後のなりたい姿 | 来年の目標 | 最初の一歩(もし〜なら) |
|---|---|---|
| 5. 週末を、自分で選んだ過ごし方で満たせている | 週末に、何もしない時間を後ろめたく感じずに過ごせている | もし土曜の朝になったら、午前中の予定を1つだけにする |
| 6. 気に入ったものだけに囲まれて暮らしている | 部屋の中で、どこに何があるか分かる | もし買い物から帰ったら、使わなくなったものを1つ手放す |
| 7. 行きたい場所に、思い立ったら行ける暮らしをしている | 月に1回、行ったことのない場所に行っている | もし月の最初の日曜になったら、行きたい場所を1つ調べる |
| 8. お金の心配をせずに、やりたいことを選べている | お金の出入りを、なんとなくではなく知っている | もし給料日が来たら、先月の出費を5分だけ見直す |
からだの目標の例文
| 3年後のなりたい姿 | 来年の目標 | 最初の一歩(もし〜なら) |
|---|---|---|
| 9. 朝から、やりたいことに全力で向かえるからだでいる | 朝、からだが軽いと感じる日が増えている | もし夕飯の片づけが終わったら、5分ストレッチをする |
| 10. 休日に、遠くまで歩いて出かけるのを楽しめている | 歩くことが、苦にならなくなっている | もし最寄り駅に着いたら、ひと駅分を歩く日を週1回つくる |
| 11. よく眠れて、毎朝すっきり目覚めている | 夜、スマホを見ずに眠れる日が多い | もし布団に入ったら、スマホを手の届かない場所に置く |
| 12. 疲れをためずに、長く働き続けられている | 疲れたときに、自分で気づいて休めている | もし昼休みになったら、今日の疲れ具合を一言だけ書く |
人との関係の目標の例文
| 3年後のなりたい姿 | 来年の目標 | 最初の一歩(もし〜なら) |
|---|---|---|
| 13. 家族と、気持ちを言葉で伝え合える関係でいる | 大切な人に、ありがとうを言葉で伝えられている | もし家族と夕飯を食べたら、今日ありがたかったことを1つ伝える |
| 14. 会いたい人と、長く付き合いを続けられている | 会いたい人に、自分から連絡できている | もし月末になったら、しばらく会っていない人に1通送る |
| 15. 自分の時間を、自分で守れる人でいる | 人の頼みを、無理なときは断れている | もし頼まれごとをされたら、その場で返事をせず一度持ち帰る |
| 16. 人と比べず、自分のものさしで毎日を選べている | 人と比べて落ち込む時間が減っている | もしSNSを開いて気持ちが沈んだら、閉じて今日できたことを1つ書く |
学び・自分のことの目標の例文
| 3年後のなりたい姿 | 来年の目標 | 最初の一歩(もし〜なら) |
|---|---|---|
| 17. 学んだことを仕事に生かして、新しい役割を任されている | 朝の30分を、自分の勉強の時間として持てている | もしコーヒーをいれたら、テキストを1ページだけ開く |
| 18. 本から得たことを、自分の考えとして人に話せている | 読んだ本から、使える一文を持ち帰れている | もし本を1章読み終えたら、残したい一文を書き写す |
| 19. 大切にしていることに沿って、迷わず選択できている | 自分が何を大切にしているか、言葉で言える | もし日曜の夜になったら、今週うれしかったことを1つ書く |
| 20. やってみたかったことを、1つ形にしている | やってみたかったことを、1つ始めている | もし年が明けた最初の土曜になったら、始めたいことを1つ試してみる |
毎日のふりかえりで、なりたい姿に近づいた実感を確かめる
来年の目標は、立てた日がいちばん輝いて見えます。それを1年持ち続けるには、目標を意識しながら毎日をふりかえることが役に立ちます。
毎日の終わりに、今日の出来事を1行書き、そこに「今日の自分は、来年の目標にどのくらい近かったか」を一言添えます。後輩の相談に乗れた日は「今日は少し近づけた」。会議で何も言えなかった日は「明日は資料が届いたら1行メモする」。こうした1行が積み重なると、なりたい姿に向かって一歩ずつ進んでいる実感が持てるようになります。
もう1つの効きめは、自分のことがよりわかってくることです。毎日の1行を月末に読み返すと、ステップ1で書いた「心が動いた場面」「力が出た場面」が、今年よりずっと具体的に見えてきます。そこで見えてきた自分に合わせて、なりたい姿の言葉を描き直してかまいません。月末の振り返り方は1ヶ月の振り返りの書き方で紹介しています。
1月に止まっても、なりたい姿に戻れば立て直せる
どんなに丁寧に立てた目標でも、1月の途中で止まる日は来ます。止まったとき、目標ごと捨ててしまうのはもったいないことです。
止まったら、まずなりたい姿の1文を読み直してください。なりたい姿がいまもしっくりくるなら、変えるのは最初の一歩のきっかけだけです。夜にやると決めたけれど、夜はいつも疲れていた。週1回と決めたけれど、その曜日は予定が入りやすかった。そうであれば、「もし」の部分を、もっと確実に通る場面に書き換えればいいだけです。
なりたい姿そのものがずれてきたと感じたら、それは自分のことがわかってきた証拠です。なりたい姿から書き直し、来年の目標も逆算し直してください。年の区切りほど大きくなくても、新しい月や新しい週の始まりも、向かい直しやすい区切りです。続かなかったときの戻り方は三日坊主を卒業する5つの仕組みでも紹介しています。
なりたい姿と来年の目標を、毎日の1行と同じ場所に置く
手帳の最初のページに書いた目標を2月に思い出せないのは、目標を書いた場所と、毎日書く場所が離れているからかもしれません。なりたい姿と目標は、毎日目に入るところに置いておくと思い出しやすくなります。
その置き場所として、ふりかえりジャーナリングアプリStockrを使ってみるのもひとつの方法です。Stockrでは、ホーム画面になりたい姿(ビジョン)と目標が表示され、毎日の出来事や考えたことを1行からストックとして残せます。ストックを書くときに目標を選んでおけば、その目標に向けた1行が目標ごとにたまり、近づいてきた歩みをあとから読み返せます。言葉にしにくい日は、AIと話しながら文章にまとめることもでき、書いたストックにはAIのコメントが届きます。
まずは今年の「心が動いた場面」を1つ、書き出してみませんか。その場面の「なぜ」が、来年の目標を描くための、なりたい姿の最初の手がかりになります。