会議で意見を言ったあと、「なぜそう思うの?」と聞かれて言葉に詰まるのは、よくあることです。頭の中では筋が通っていたはずなのに、口に出すと理由がうまく出てこない。メールで提案を書いても、「ほかの案は考えた?」と返ってきて、そこで初めて別の案に気づく。自分の考えは、自分ではつながって見えるので、抜けている所に気づきにくいものです。
この記事では、その抜けに自分で気づくための、毎日5分の論理的思考トレーニングを紹介します。その日に自分が下した判断を1つ選び、結論・理由・具体例・ほかの見方の4行で書きます。
論理的思考のトレーニングは、何のためにするのか
ここでいう論理的思考は、相手を言い負かす力ではありません。自分の考えが「なぜ」でつながっているかを確かめ、つながっていない所に気づく力です。
フレームワーク(考え方の型)をたくさん覚えても、自分の考えのどこが抜けているかは、使ってみるまで分かりません。このトレーニングでは、正しい答えを出すことより、自分の判断を書いて確かめる習慣をつくることを大事にします。
書くことと、反対の見方を考えること
文章を書くことで、考える力そのものが伸びるのか。これを確かめるために、アメリカの大学の研究チームが、一般教養の生物の授業で、実験の授業の進め方を2通りに分けて比べました。一方の学生には実験の授業のテーマについて文章を書く課題に取り組んでもらい、もう一方の学生には、これまでどおり小テストで理解を確かめながら授業を進めてもらいました。授業期間の初めと終わりに考える力を測るテストを受けてもらったところ、点数がはっきり上がったのは書く課題に取り組んだ学生だけで、なかでも、情報を分けて整理する力と、そこから結論を導く力が伸びていました(担当の先生や、もともとの力の差も点数に影響していました)。書くこと自体が、筋道を立てて考える練習になっていたということです。
もう1つは、人が自分の考えに合う情報ばかりを信じてしまう傾向を、どうすれば和らげられるかを確かめた研究です。別の研究チームが、社会の問題についての研究結果を読んで評価してもらう実験で、「できるだけ公平に判断してください」と頼む人たちと、「もし反対の結果が出ていたら、同じように受け止めたかを考えてください」と頼む人たちに分けて比べました。すると、判断の偏りがより小さくなったのは、反対の結果を考えてもらった人たちでした。公平であろうと気をつけるより、反対の見方を実際に思い浮かべるほうが、思い込みを和らげるのに効いたということです。
どちらの研究も、大学生の考える力のテストや、実験の中での判断の偏りを測ったもので、社会人が自分の判断を毎日書いたときの効果を確かめたものではありません。それでも、書くことで筋道を立てる力が伸び、反対の見方を実際に考えることで思い込みが和らぐのなら、この2つを毎日の判断で1回ずつ試してみる意味はあります。以下の4行は、そのためにつくった練習です。
毎日5分、その日の判断を4行で書く
題材は、その日に自分が決めたことです。仕事の進め方、誰に何を頼むか、断ったこと、選んだことなど、何でも構いません。迷った末に決めたことほど、よい題材になります。
1行目:結論を書く(1分)
その日に決めたことを、1文で書きます。「〜することにした」「〜を選んだ」の形にすると、何について考えるのかがはっきりします。
例:来週の打ち合わせの資料は、細かい表をやめて、図1枚にまとめることにした。
2行目:理由を「なぜなら」で書く(1分)
結論の理由を、「なぜなら」で始めて1文で書きます。浮かんだ理由をいったん書き出し、いちばん大きいものを1つ選びます。ここで手が止まったら、理由をまだ言葉にできていないということです。
例:なぜなら、前回の打ち合わせで表を説明しているうちに時間がなくなり、決めるべきことが決まらなかったから。
3行目:具体例を「たとえば」で書く(1分)
理由を支える具体的な出来事や数字を、「たとえば」で始めて書きます。理由が本当にそう言えるのかを、自分で確かめる行です。具体例が出てこない理由は、思い込みかもしれません。
例:たとえば、前回は30分のうち20分を表の説明に使い、残り10分では結論が出ずに持ち越しになった。
ここまでの3行で、その日の判断の筋道ができました。3行と次の1行を毎晩同じ場所に残しておくと、翌日に結果を書き足したり、週末に読み比べたりできます。
今日の判断の4行を、毎晩ここに。翌日に結果を1行足せます。今夜から始める4行目:ほかの見方を1つ書く(2分)
最後に、「もし反対の結論にするとしたら、どんな理由がありうるか」を1つ書きます。先に紹介した研究では、反対の結果を想像してもらうと判断の偏りが小さくなりました。4行目は、その考え方を毎日の判断に当てはめたものです。書いてみて、自分の結論のほうがよいと思えたら、それで構いません。反対の見方に一理あると思えたら、結論に条件を1つ足します。
例:ほかの見方:表がないと、数字を確かめたい人が判断できないかもしれない。→ 図1枚にして、表は資料の最後に付けておく。
続けるときの3つのコツ
理由と具体例が同じことを言っていないか確かめる。「忙しいから」の具体例が「時間がなかった」になっていたら、理由を言い換えただけです。具体例には、日付や回数、誰が何を言ったかなど、あとで確かめられることを書いてみてください。
同じ判断を、次の日に読み返して結果を1行足す。翌日に4行を読み返し、その判断がどうなったかを1行書き足します。理由が当たっていたのか、ほかの見方のほうが正しかったのかが分かると、次の判断の材料になります。
1週間に1回、7日分の「ほかの見方」を読み比べる。週末に7日分を読み返すと、自分が見落としやすい見方の傾向が見えてきます。いつも人の気持ちを見落とすのか、お金や時間を見落とすのか。傾向が見えれば、次の1週間で意識することを1つ選べます。週のふりかえり方は1週間の振り返りのやり方で紹介しています。
論理的思考の隣にある力も、同じように書いて鍛えられる
4行を書いてみて、そもそも何に迷っていたのかが分からない日は、考えが散らかっているのかもしれません。頭の中を書き出して整える方法は、思考整理のやり方で紹介しています。書いた4行を、その場にいなかった人に伝える練習は、説明力を鍛えるトレーニングが参考になります。自分の考え方そのものを外から眺める力については、メタ認知の記事で紹介しています。
論理的思考のトレーニングにアプリを使うなら
毎日続けるなら、スマホで書けると手間が減ります。選ぶときは、短く書き始められることと、前の日の記録にすぐ戻れることの2つを目安にしてみてください。コツで紹介した「次の日に結果を1行足す」がしやすくなります。
今夜の4行から、論理的思考のトレーニングを。StockrをはじめるふりかえりジャーナリングアプリのStockrは、出来事や気づきを1行から残せるアプリです。「出来事」「感じたこと・考えたこと」「学んだこと」の順に書ける型があります。決めたことと具体例は「出来事」に残せます。理由とほかの見方は「感じたこと・考えたこと」に、翌日に分かった結果は「学んだこと」に書けます。うまく言葉にならない日は、AIと話しながら考えをまとめることもできます。書いた記録は「再発見」で毎日届くので、少し前の自分の判断に、また出会えることがあります。読み返すきっかけになります。Stockrは7日間の無料体験から始められます(無料プランはありません)。
今夜、今日決めたことを1つ、4行で書いてみる
その日に自分が決めたことを1つ選び、結論・理由・具体例・ほかの見方の4行で書く。毎日くり返すと、自分の考えのどこが抜けやすいかが分かり、「なぜそう思うの?」と聞かれたときに答える材料がそろっていきます。
まずは今夜、今日いちばん迷って決めたことを1つ選ぶところから始めてみてください。