文章力を鍛えたいとき、最初に文法の本を開かなくても大丈夫です。メールを送ったあとに「結局、何が言いたいの?」と聞き返される。報告書を書き終えて読み返すと、大事なことが最後の段落に埋もれている。どちらも、文法の間違いではありません。「この文章で、誰に何を伝えるのか」を決めないまま書き始めたときに起きやすいつまずきです。
そこでこの記事では、その日あった出来事を、誰かに伝えるつもりで書く、毎日5分の文章力トレーニングを紹介します。書く前に「誰に・何を」を1行で決め、5文以内で書き、翌朝に1か所だけ直す、という3つのステップです(夜に4分、翌朝に1分)。
文章力のトレーニングは、何のためにするのか
ここでいう文章力は、きれいな言葉を並べる力ではありません。読む人が一度読んだだけで「何が言いたいのか」と「自分に何が求められているのか」が分かる文章を書く力です。
仕事のメールや報告は、読んだ人に何かを決めてもらったり、動いてもらったりするために書きます。そして、伝わる文章を書こうとすると、自分が本当は何を言いたいのかを先に決める必要があります。このトレーニングでは、相手に伝わることと、自分の考えがはっきりすることの2つをねらいにします。センスを磨くというより、決めて・書いて・直す手順を毎日くり返す、という姿勢で取り組みます。
書く前に目当てを決める練習は、効果が大きかった
アメリカの研究チームが、小学生を対象にした文章指導の研究報告115本を集め、教え方ごとの効果を比べました。書く前に「この文章に何を入れるか」という具体的な目当てを示す方法は、効果が大きいほうでした。書いた文章に感想や指摘をもらったり、自分で評価したりする取り組みにも効果がありました。
一方で、書く量や時間を増やす練習の効果は小さめでした。文法を教える授業だけでは、文章の出来がはっきり良くなったとは言えませんでした。冒頭で、文法の本から始めなくてよいと書いたのは、この結果があるからです。
小学校高学年から高校生を対象にした別の報告でも、書く前に具体的な目当てを示す方法は、効果のあった教え方に入っています。どちらも、子どもが学校の授業で教わったときの効果を測った研究で、大人が自分の1日を書く練習を確かめたものではありません。ただ、書く前に目当てを決めることと、書いたものを見直すことは、大人が1人でもすぐにできます。そこで、以下のステップに取り入れています。
毎日5分、文章力を鍛える3つのステップ
題材は、その日の自分の1日です。毎日かならず手に入り、中身をいちばんよく知っているので、何を書くかに迷いません。
ステップ1:書く前に「誰に・何を」を1行で決める(1分)
書き始める前に、「誰に向けて」「何をいちばん伝えたいか」を1行で書きます。冒頭の「結局、何が言いたいの?」と聞き返されることを防ぐのが、この1行です。読み手は実在の人でも、明日の自分でも構いません。「何を」を決めるのは、研究の「目当てを先に決める」に近い練習です。「誰に」は研究から来たものではありませんが、読み手が決まると選ぶ言葉も決まるので加えています。
例: 誰に:同じチームの先輩に 何を:今日の会議で決まったのは「来週の提案は数字を2つに絞る」こと
ステップ2:5文以内で、伝えたいことから書く(3分)
ステップ1で決めた「何を」を1文目に置き、そのあとに理由や経緯を足していきます。伝えたいことを先に書けば、大事なことが最後の段落に埋もれることはありません。全体で5文以内にまとめ、1つの文で言うことは1つにします。長くなった文は、「〜が、〜ので」でつなげずに2つに分けてみてください。
例: 今日の会議で、来週の提案は数字を2つに絞ることに決まりました。 先方が知りたいのは、費用と効果の見込みだからです。 これまでの資料は数字が8つあり、どれが大事か伝わっていませんでした。 明日の午前中に、2つの数字の根拠を確認します。
書いた5文は、翌朝のステップ3で読み返します。前の晩の文章をすぐ開ける場所に書いておくと、直す作業が1分で済みます。
「誰に・何を」と5文の文章を、毎晩ここに。翌朝すぐ読み返せます。今夜から始めるステップ3:翌朝に読み返し、1か所だけ直す(1分)
書いた文章は、その場では直さず、翌朝に読み返します。時間をおくと、書いたときの思い込みが抜けて、読み手に近い目で読めます。直すのは1か所だけにします。分かりにくい言葉を言い換える、長い文を2つに分ける、順番を入れ替える、のどれかを選びます。研究の「書いたものを評価する」を、1人でできる形にした練習です。
例:「どれが大事か伝わっていませんでした」→「どれを見ればいいのか、先方が迷っていました」
1か所に絞るのは、毎朝の負担を小さくして続けるためです。直した前と後を両方残しておくと、自分が何を直しがちなのかが見えてきます。
続けながら効果を高める3つのコツ
読み手は、毎日変えてみる。先輩、家族、1年後の自分など、読み手が変わると、同じ出来事でも選ぶ言葉が変わります。読み手に合わせて言葉を選び直すことが、そのまま練習になります。
直した箇所を、ひとことで記録する。「長い文を切った」「専門用語を言い換えた」のように、直した種類を書いておきます。同じ直しが何日も続いたら、それが今の自分の書き癖です。
1週間に1回、7日分を読み比べる。週末に7日分を読み返すと、1文目で言いたいことを言えた日と、言えなかった日の違いが見えてきます。週のふりかえり方は1週間の振り返りのやり方で紹介しています。
文章力の隣にある力も、同じ手順で鍛えられる
ステップ1で「何を」が1行にまとまらない日は、伝えたいことがまだ自分の中で決まっていないのかもしれません。たくさんの出来事から大事なことを選ぶ練習は、要約力を鍛えるトレーニングで紹介しています。頭の中を書き出して整理する方法は、思考整理のやり方が参考になります。「うまく言えない」を言葉にしていく練習は、言語化力を鍛える毎日5分の習慣で紹介しています。
文章力のトレーニングにアプリを使うなら
毎日続けるなら、スマホで書けると手間が減ります。選ぶときは、短く書き始められることと、前の日に書いたものを読み返しやすいことの2つを目安にしてみてください。ステップ3の「翌朝に読み返す」がしやすくなります。
今夜の5文から、文章力のトレーニングを。StockrをはじめるふりかえりジャーナリングアプリのStockrは、出来事や気づきを1行から残せるアプリです。「出来事」「感じたこと・考えたこと」「学んだこと」の順に書ける型があります。ステップ2の文章は「出来事」に書けます。翌朝に直して気づいた自分の書き癖は、その日の記録の「学んだこと」に残せます。言葉がまとまらない日は、AIと話しながら文章にまとめることもできます。書いた記録は「再発見」で毎日届くので、少し前の自分の文章に、また出会えます。Stockrは7日間の無料体験から始められます(無料プランはありません)。
今夜、1行目を決めてから書いてみる
文章力は、書く前に「誰に・何を」を決め、5文以内で書き、翌朝1か所だけ直す。この毎日5分のくり返しで鍛えていけます。
まずは今夜、「誰に・何を」の1行を書くところから始めてみてください。