今日こそ振り返りをしようとノートを開いたのに、何を書けばいいのかわからないまま手が止まってしまった。あるいは、気がつけば反省点や欠点ばかり書いてしまって、なんだか気分が沈んでしまった——そんな経験はないでしょうか。
「今日はどうだったかな」という漠然とした問いには、漠然とした答えしか返ってきません。振り返りが習慣になっている人は、実は考える前に「問い」を決めています。これは気の持ちようの話ではなく、実験でも確かめられていることです。大学生に学んだことの記録を書いてもらった研究では、自由に書いたグループよりも、「どこがいちばん納得できたか」「まだ分かっていない点はどこか」といった問いに沿って書いたグループのほうが、内容の理解が深まったという報告があります(ドイツの大学の研究チームによる実験)。白紙に向かって考え始めるのではなく、具体的な質問にひとつ答える——それだけで、言葉は自然と出てきて、振り返りの中身も変わるのです。
この記事では、そのまま使える振り返りの質問を60個、場面別にまとめました。1日の終わりに、週の節目に、仕事の区切りに——答えたくなった質問をひとつ選んで、1行書くところから始めてみませんか。
質問リストの使い方
使い方はシンプルです。いまの場面に合うカテゴリを開き、答えたくなった質問をひとつ選んで、思いつくままに書く。うまくまとめる必要はありませんし、1行で終わる日があってもかまいません。
ひとつだけコツを挙げるなら、「答えを出す」より「言葉にする」を優先することです。振り返りは結論を出すための会議ではなく、自分の頭と心の中にあるものを一度外に出してみる時間です。きれいな答えにならなくても、書いた言葉そのものがあとで効いてきます。
心理学では、同じ「自分を見つめる時間」でも、失敗や欠点を繰り返し考え続けること(反すう)と、好奇心から自分を知ろうとすること(内省)は別ものとして区別されていて、前者は気分の落ち込みに、後者は自己理解につながりやすいことが知られています。両者を分けるのは、多くの場合問いの立て方です。「なんであんなことをしてしまったんだろう」ではなく、「あの場面で、自分は何を大事にしたかったんだろう」。この記事の質問は、どれも後者の側に立つように作っています。
振り返りそのもののやり方や考え方を先に押さえたい方は、振り返りのやり方を、質問に答えたあとの「書き方の型」を見たい方は振り返りの書き方と例文を、毎日書く習慣としてのお題を探している方はジャーナリングのお題50選もあわせてどうぞ。
1日を振り返る質問(1〜10)
1日の振り返りは、短くて大丈夫です。寝る前やお風呂あがりの5分で、ひとつだけ。
- 今日いちばん印象に残っている場面はどこ?
- 今日の自分の判断で、良かったと思えるものはどれ?
- 今日、時間を使いすぎたと感じることは何?
- 今日の気分を一言で表すと?その気分はどこから来た?
- 今日、人との関わりの中で感じたことは?
- もし今日をもう一度やり直せるなら、何を変える?
- 今日の「予想外」は何だった?それにどう反応した?
- 今日、本当はやりたかったのにできなかったことは?
- 明日に持ち越したくない気がかりは何?
- 今日の中で、明日も繰り返したいことはどれ?
1週間を振り返る質問(11〜20)
週の振り返りは、日々の記録より一段高いところから眺める時間です。日曜の夜か月曜の朝に、手帳やカレンダーを見ながら答えるとやりやすくなります。
- 今週いちばんエネルギーを使ったことは何?それは使う価値があった?
- 今週、自分で決めて動けたことはどれ?
- 今週の「よくやった」をひとつ挙げるなら?
- 今週、先延ばしにしたことは何?何が引っかかっている?
- 今週の時間の使い方を円グラフにしたら、どこを変えたい?
- 今週出会った中で、いちばん考えさせられた言葉や出来事は?
- 先週の自分と比べて、何かひとつ変わったことはある?
- 今週、誰かに助けられた場面は?
- 来週の自分に一言アドバイスするなら?
- 来週「これだけはやる」と決めるなら何?
仕事・プロジェクトを振り返る質問(21〜30)
仕事の振り返りは、個人でもチームでも「うまくいったこと」から始めるのがコツです。反省点から入ると、守りの思考になって視野が狭くなります。KPT(Keep・Problem・Try)などのフレームワークを使う場合も、この質問群はそのまま材料出しに使えます。
- この仕事(プロジェクト)で、うまくいったことは何?なぜうまくいった?
- 想定と違ったことは何?どの時点で気づいた?
- 次も続けたいやり方(Keep)はどれ?
- 問題だと感じていること(Problem)を、人ではなく仕組みの言葉で言うと?
- 次に試したいこと(Try)をひとつ選ぶなら?
- この期間で、自分のスキルや知識はどこが伸びた?
- チームや関係者とのやりとりで、学んだことは?
- もっと早く相談・共有すればよかったことはある?
- この経験を一言で後輩に伝えるなら、何と言う?
- この仕事の「本当の目的」に、どれくらい近づけた?
目標を振り返る質問(31〜40)
目標の振り返りで大切なのは、達成度の採点だけで終わらせないことです。進んだ距離と同じくらい、「その目標はいまも自分にとって大事か」を確かめることに意味があります。
- いまの目標を、最初に立てたときの気持ちを思い出して言い直すと?
- 目標に対して、今日(今週)進んだことはある?小さくてもいい
- 進んでいないとしたら、何が止めている?時間?気持ち?やり方?
- その目標を達成したら、毎日の何が変わる?
- 目標のために「やめたこと」はある?
- いまの目標は、半年前の自分が聞いたら驚く内容?それとも同じ?
- 目標までの道のりで、いちばん最初の小さな一歩は何?
- この目標、本当は誰のための目標?
- 期限を決めているなら、残り日数を見ていまどう感じる?
- 目標を少しだけ書き直せるとしたら、どこを変える?
自分を知るための質問(41〜50)
少し時間のあるときに向き合いたい、深めの質問です。答えが出なくてもかまいません。「すぐに答えられなかった」ということ自体が、自分を知る手がかりになります。
- 最近、時間を忘れて没頭したことは何?
- 逆に、気が進まないのにやり続けていることは?
- 人から褒められて、いちばんうれしかったのはどんなとき?
- 自分が大切にしている価値観を3つ挙げるなら?
- 最近イラッとしたことは?そこに自分のどんな「譲れなさ」がある?
- 5年前の自分がいまの自分を見たら、何と言うと思う?
- お金と時間が十分にあったら、まず何をする?
- 「こうあるべき」と思い込んでいるかもしれないことは?
- 最近の選択の中で、いちばん「自分らしい」と思えるものは?
- 明日からひとつだけ習慣を変えられるなら、何を変える?
1ヶ月・1年を振り返る質問(51〜60)
月末や年末の節目に使う質問です。記録が手元にあると答えやすいので、日々のメモや写真、カレンダーを開きながらどうぞ。1年の振り返りをじっくりやりたい方は、1年を振り返る質問リストに年末専用の質問をまとめています。
- この1ヶ月(1年)を漢字1文字で表すと?その理由は?
- この期間の「ベスト3」の出来事を挙げるなら?
- いちばん大変だったことは?どうやって乗り越えた?
- 始めたこと・やめたことは何かある?
- この期間で、人間関係に変化はあった?
- 期間の初めの自分に教えてあげたいことは?
- 数字で見える変化はある?(続けた日数、読んだ本、貯金、体重など)
- この期間の自分に、点数ではなく「ねぎらいの言葉」をかけるなら?
- 次の1ヶ月(1年)に持っていきたいものと、置いていきたいものは?
- 次の節目の自分は、どんな状態だったら最高?
質問の答えは「残す」と価値が倍になる
60個の質問を眺めて、気になるものは見つかったでしょうか。最後にひとつだけ、質問に答えるのと同じくらい大切なことをお伝えさせてください。それは、答えを書いて残しておくことです。
頭の中で考えるだけでも振り返りにはなりますが、言葉にして残しておくと、あとから読み返せます。1ヶ月前の自分が「今週いちばんエネルギーを使ったこと」に何と答えていたか。半年前の自分が挙げた「大切にしている価値観」はいまと同じか。同じ質問への答えの変化こそが、自分の変化そのものです。その場では小さな1行でも、積み重なると「自分がどう歩いてきたか」の記録になります。
ノートでも手帳でもかまいませんし、スマホで手軽に残したい方には、書いたふりかえりが日付つきで積み重なり、過去の自分の言葉とまた出会えるアプリ(Stockrもそのひとつです)を使う方法もあります。書く習慣そのものを育てたい方は日記を続けるコツも参考にしてみてください。
今日の質問をひとつ選んで、1行だけ。そこから始めてみませんか。