うまくいかなかった日の夜、寝る前に3行だけ書いてみませんか。会議で言うつもりだったことが言えなかった。頼まれた資料に間違いが見つかった。帰り道も、お風呂の中でも、その場面が何度も頭の中で再生されて、「なんであんなことを」と自分を責める言葉ばかりが浮かぶ。そんな夜は、誰にでもあります。
失敗した日に落ち込むこと自体は、自然なことです。大事なのは、そのあと自分にどんな言葉をかけ、翌日どう動き出すかです。この記事では、うまくいかなかった出来事・自分にかける言葉・それでもうまくいったことの3行を書く、毎晩5分のレジリエンス・トレーニングを紹介します。
レジリエンスのトレーニングは、何のためにするのか
レジリエンスは「立ち直る力」と訳されることの多い言葉です。ここでは、落ち込まない強さのことではなく、落ち込んだあとに、もう一度動き出せる力として考えます。
うまくいかなかった日のあと、人はつい2つの方向に流れがちです。1つは、自分を責め続けて次の一歩が重くなること。もう1つは、なかったことにして同じつまずきをくり返すことです。このトレーニングで目指すのは、そのどちらでもなく、起きたことを受け止めたうえで、次にどうするかを自分で選べる状態です。
自分にかける言葉と、うまくいったことを書く意味
失敗した自分にやさしくすると、反省しなくなってしまうのではないか。そう心配する人は多いと思います。これを確かめるために、アメリカの大学の研究チームが、自分の弱点について書く実験を行いました。インターネットで集めた大人に、自分の弱点を1つ挙げてもらい、その弱点について、責めるのではなく思いやりと理解をもって自分に語りかけるように書く人、自分のよいところを書く人、趣味について書く人の3つに分けて比べたのです。すると、弱点を直したいという気持ちがいちばん強かったのは、思いやりをもって自分に語りかけた人たちでした。同じ研究チームの別の実験では、難しいテストでうまく解けなかったあと、「難しいと感じるのはよくあること」という一文を読んだ学生のほうが、何も読まなかった学生より、次のテストに向けて長く勉強していました(自分をほめる一文を読んだ学生との差や、2回目のテストの点数の差は、はっきりしませんでした)。自分を責めるより、思いやりをもって失敗を受け止めたほうが、次に向かう気持ちが保たれやすいということです。
もう1つは、毎晩「うまくいったこと」を書くとどうなるかを確かめた研究です。別の研究チームがインターネットで参加者を募り、いくつかの書く課題をくじ引きのように割り振って比べました。そのうちの1つが、毎晩寝る前に、その日うまくいったことを3つと、それぞれがなぜうまくいったのかを書く課題で、期間は1週間でした。比べる側の人たちには、子どものころの思い出を毎晩書いてもらいました。すると、うまくいったことを書いた人たちは、1か月後ごろから幸福感の点数が上がって気分の落ち込みを測る点数が下がり、その状態が半年後まで続いていました。頼まれた1週間が終わったあとも自分から書き続けた人ほど、幸福感が高かったとも報告されています(続けるかどうかは本人が選んだので、続けた人がもともと違っていた可能性もあります)。
どちらの研究も、大学生や、幸せになりたいと思ってインターネットで集まった人たちの、自分で答える質問の点数や勉強の時間を測ったもので、「立ち直る力」や、この3行を組み合わせた書き方そのものを確かめたわけではありません。それでも、失敗を思いやりをもって受け止めると次に向かう気持ちが保たれ、うまくいったことを書き続けると気分のよい状態が長く続くのなら、この2つをうまくいかなかった日の夜に一緒に書いてみる意味はあります。次の3行は、そのためにつくった練習です。
毎晩5分、うまくいかなかった日を3行で書く
題材は、その日にうまくいかなかったことです。大きな失敗でなくて構いません。言いそびれたこと、予定どおりに進まなかったこと、つい強く言ってしまったことなど、寝る前に思い出してしまう場面を1つ選びます。
1行目:うまくいかなかったことを、事実だけで書く(1分)
何が起きたかを、その場にいた人が見ても同じように書ける形で、1文にします。「最悪だった」「またやってしまった」といった評価は、ここでは書きません。評価を外すと、何が起きたかだけが残ります。
例:午後の打ち合わせで、先週のデータの数字を言い間違え、上司に訂正された。
2行目:友だちに声をかけるように、自分に1文書く(2分)
同じことが友だちに起きたら、どんな言葉をかけるかを考えて、その言葉を自分に向けて書きます。慰めるだけで終わらせず、何が起きたのかを受け止める言葉にするのがポイントです。先に紹介した研究で、弱点を直したい気持ちがいちばん強くなったのは、この書き方でした。
例:数字を確かめる時間がないまま、打ち合わせに入ったんだよね。誰でも間違えることはあるし、その場ですぐ直せたのはよかった。
ここまでの2行で、その日のつまずきを受け止める準備ができました。うまくいかなかった日の2行を毎晩同じ場所に残しておくと、1週間後や1か月後に、自分がどんな場面でつまずきやすいかを読み返せます。
うまくいかなかった日の3行を、毎晩ここに。1週間分をあとで読み比べられます。今夜から始める3行目:それでもうまくいったことを1つ、理由と一緒に書く(2分)
最後に、同じ日にうまくいったことを1つと、なぜうまくいったのかを書きます。うまくいかなかった日でも、まったく何もできなかった日はほとんどありません。理由まで書くのは、うまくいった理由が分かれば、次の日にもう一度同じことができるからです。
例:夕方の資料づくりは予定より早く終わった。午前中に必要な数字を先にまとめておいたから。
余裕のある日は、「明日、1つだけ試すこと」を書き添えてみてください(例:明日の打ち合わせの前にも、数字を先に確かめておく)。落ち込んだ気持ちのまま夜を終えずに、次の一歩を決めて眠ることができます。
続けるときの3つのコツ
2行目に責める言葉が出てきたら、書き直す。「ちゃんと確認しないからだ」と書いてしまったら、それを友だちに言うかどうかを考えてみてください。言わないなら、「確認する時間がなかったんだね」のように、起きたことをそのまま受け止める言葉に書き直します。書き直すこと自体が練習です。
うまくいかなかったことがない日は、3行目だけ書く。何事もなく終わった日は、うまくいったことと、その理由だけを書きます。先に紹介した研究のように、うまくいったことを書く習慣は、それだけでも試してみる価値があります。
週に1回、7日分の1行目と3行目を読み比べる。週末に読み返すと、つまずきやすい場面と、うまくいったときの理由が並んで見えてきます。つまずきの多くが同じ場面で起きているなら、その場面の前に、うまくいった日のやり方を1つ持ち込んでみてください。
レジリエンスの隣にある力も、書いて育てられる
2行目を書こうとしても、そのとき自分が何を感じていたのかがはっきりしない日もあります。気持ちに名前をつける練習は、感情の言語化トレーニングで紹介しています。仕事のミスを次の改善につなげる考え方は、反省のやり方が参考になります。新しいことに挑戦するのがこわいと感じるときは、挑戦がこわいときの記事も読んでみてください。
レジリエンスのトレーニングにアプリを使うなら
うまくいかなかった日の夜ほど、紙とペンを出すのはおっくうになります。スマホで書けるアプリを選ぶなら、短く書き始められることと、前に書いた記録にあとで出会えることの2つを目安にしてみてください。
今夜の3行から、レジリエンスのトレーニングを。StockrをはじめるふりかえりジャーナリングアプリのStockrは、出来事や気づきを1行から残せるアプリです。「出来事」「感じたこと・考えたこと」「学んだこと」の順に書ける型があります。うまくいかなかったことは「出来事」に、自分にかける言葉は「感じたこと・考えたこと」に、うまくいったこととその理由は「学んだこと」に書けます。言葉がうまく出てこない日は、AIと話しながら気持ちを整理することもできます。書いた記録は「再発見」で毎日届くので、少し前にうまくいかなかった日の自分に、また出会えることがあります。そのころより落ち着いて読める自分に気づくこともあるかもしれません。Stockrは7日間の無料体験から始められます(無料プランはありません)。
今夜、うまくいかなかったことを1つ、3行で書いてみる
うまくいかなかった出来事を事実だけで書き、友だちに声をかけるように自分に1文書き、それでもうまくいったことを理由と一緒に書く。毎晩くり返すうちに、失敗した日にも自分を責め続けずに、次にどうするかを決められる夜が増えていくかもしれません。
まずは今夜、頭の中で何度も再生してしまう場面を1つ選ぶところから始めてみてください。