気づく力の鍛え方。見落としていた「おや?」を拾えるようになる、毎日の3つの練習

気づく力の鍛え方。見落としていた「おや?」を拾えるようになる、毎日の3つの練習

2026/10/14

  • #ふりかえり

  • #成長

10月に入って、上期のふりかえり面談があった方も多いかもしれません。そこで上司から「もっと周りに気づけるといいね」と言われて、うなずいたものの、帰り道に「気づくって、何をすればいいんだろう」と考えこんでしまった。そんな経験はないでしょうか。

同じ会議に出ていた先輩は、終わったあとに「Aさん、途中から黙ってたね」とさらりと言う。自分はその場にいたのに、まったく気づいていなかった。気づく人と気づかない人の差は、センスや性格の違いのように見えて、自分にはどうしようもないことのように思えてきます。

けれど、気づく力は毎日の小さな練習で育てていけるものです。この記事では、見落としていた「おや?」を拾えるようになるための3つの練習と、場面ごとに使える「今日のレンズ」の例を紹介します。下期のはじまりに、ひとつ試してみませんか。

気づく人と気づかない人の差は「見る場所」を決めているかどうか

気づく力について考えるとき、まず知っておきたいのは、人は注意を向けているものしか見えていないということです。

アメリカの心理学の研究チームが行った有名な実験があります。参加者192人に、バスケットボールをパスし合う人たちの動画を見せ、片方のチームのパスの回数を数えてもらいました。動画の途中では、ゴリラの着ぐるみを着た人や傘を差した人が画面を横切ります。ところが、パスを数えることに集中していた参加者のうち、全体の46%がその人物にまったく気づきませんでした。目には映っていたはずなのに、見えていなかったのです。

人の注意には限りがあるので、そのとき「何を見ようとしているか」で、見えるものが決まってしまう。この実験は、そのことをはっきり見せてくれました。

会議で「Aさんが途中から黙っていた」と気づいた先輩は、おそらく会議のあいだ、議題と同じくらい人の様子を見ていたのでしょう。自分は議題を追うことに集中していたので、人の様子は目に入っていても、気づきとして残らなかった。気づく人は、特別な目を持っているのではなく、どこを見るかを自分で決めているのだと考えると、練習の入り口が見えてきます。

気づく力は、あとから振り返る練習で変わっていく

「どこを見るか」は、生まれつき決まっているものではありません。経験を積んだ人ほど、同じ場面から多くのことを拾えるのは、見る場所が少しずつ育っていくからです。

アメリカの教育研究のチームは、数学の先生たちが自分たちの授業の録画を持ち寄り、仲間と一緒に見て話し合う集まりを続けた様子を調べています。参加の前後で、先生たちが授業の場面について話す内容を比べると、はじめは先生自身の進め方や教室の雰囲気についての話が中心だったのが、しだいに「この生徒はどう考えてこの答えを出したのか」という生徒の考え方に目を向けて語るようになっていきました。

ここで大事なのは、先生たちが特別な訓練を受けたわけではなく、見る観点を決めて、同じ場面をあとから振り返ることをくり返したという点です。気づく力は、その場で鋭くなろうとするより、あとから振り返る時間のなかで育っていくもの。そう考えると、毎日の生活のなかでも同じ練習ができそうです。

気づく力を鍛える3つの練習

ここからは、仕事の日でも休みの日でもできる3つの練習を紹介します。どれも長い時間はかかりません。3つ全部でなくても、ひとつから始めて大丈夫です。

練習1. 朝、今日の「レンズ」をひとつ決める

ひとつ目は、朝のうちに今日は何を見るかを、ひとつだけ決めておく練習です。この記事では、これを「今日のレンズ」と呼びます。

ゴリラの実験のように、人はパスを数えることに集中すると、ほかのものが見えなくなります。それなら逆に、見たいものを先に決めておけば、ふだんなら素通りしていたことが目に入ってくるはずです。たとえば今日の会議のレンズを「誰がいちばん話しているか」に決めておくと、議題を追いながらでも、話している人と黙っている人の違いに目が向きやすくなります。

レンズは、目で見て確かめられる小さなものにするのがコツです。「チームの雰囲気をよく見る」のような大きなレンズだと、何を見ればいいのかが分からず、結局いつもと同じ見方に戻ってしまいます。「最初に発言した人は誰か」「お客さんが最初に手に取ったものは何か」のように、あとで答えが言えるくらいの大きさにしてみてください。

練習2. いつもの場面で「前回との違い」をひとつ探す

ふたつ目は、毎日くり返している場面のなかで、前回とどこが違うかをひとつ探す練習です。

毎朝の通勤、週に一度の定例会議、いつも作っている資料。慣れた場面ほど、私たちは「いつもどおり」とまとめて見てしまい、細かな変化を拾わなくなります。そこで、「先週と比べて、今日の定例は何が違ったか」を探しながらその場にいるようにすると、見慣れた場面がもう一度、観察の対象に戻ってきます。

アメリカの心理学者が音楽家と行った研究では、オーケストラの奏者に「前回の演奏をそのまま再現する」ように演奏してもらった場合と、「自分にしか分からない程度でいいので、毎回少し新しい演奏にする」ように演奏してもらった場合を比べています。録音を聴いた人たちは、後者の演奏のほうを好み、奏者自身もその演奏をより楽しんでいました。いつもの中に新しい違いを探すことは、同じことのくり返しに感じていた時間そのものを、少し違ったものに変えてくれるのかもしれません。

違いは大きくなくてかまいません。「今日の定例は、課長が最初に結論を言っていた」「いつもの電車で、向かいの人がみんなスマホではなく本を読んでいた」くらいの小さな違いで十分です。

練習3. 夜に「おや?」を1行残し、週末に並べて読む

みっつ目は、その日いちばん「おや?」と思ったことを夜に1行だけ書き残し、週末にまとめて読む練習です。

先生たちの集まりがそうだったように、気づく力はその場よりも、あとから振り返る時間のなかで育っていきます。ただ、人の記憶はすぐに薄れてしまうので、1週間前の小さな「おや?」は、書いておかなければほとんど思い出せません。だからこそ、1日1行でいいので、言葉にして残しておくことが大切です。

書くときは、「今日のレンズで何が見えたか」か「前回との違いは何だったか」のどちらかに答える形にすると、手が止まりにくくなります。

  • 今日のレンズ(誰がいちばん話しているか):Bさんが話しはじめると、みんながメモを取りはじめていた
  • 前回との違い:今日の定例は、課長が最初に結論を言っていたので、15分早く終わった

週末には、その週に書いた5〜7行を並べて読んでみてください。1行ずつでは小さな出来事でも、並べると「人が話を聞く姿勢になるのは、話の最初に結論があるときだ」のような、ひとつのつながりが見えてくることがあります。これが、拾った「おや?」が自分の見方として育っていく瞬間です。

場面別・今日のレンズの例

レンズを決めるのに迷ったら、次の表から今日の予定に近いものを選んでみてください。「拾えることの例」は、そのレンズで見たときに見えてきやすいことです。

場面今日のレンズ拾えることの例
会議誰がいちばん話しているか話している人と黙っている人の偏り、黙りはじめたタイミング
会議何が決まり、何が決まらなかったか決まらなかった議題に共通する、情報や担当者の不足
1on1・面談相手の表情が変わった瞬間相手が本当に気にしている話題
接客・営業お客さんが最初に見た場所・手に取ったもの説明より先に興味を持たれているポイント
資料づくりいちばん時間がかかった作業毎回つまずいている工程と、その手前にある原因
チームの仕事誰かが「ありがとう」と言われた場面チームの中で助けになっている、目立たない仕事
研修・勉強会講師がいちばん時間をかけた話講師がいちばん伝えたかったこと
家族・友人との時間相手が楽しそうに話していた話題相手がいま大事にしていること
通勤・散歩昨日までと違う景色をひとつ季節の変わり目、街の小さな変化
自分の気持ち今日いちばん気持ちが動いた瞬間自分がうれしくなる・疲れるきっかけ

同じレンズを1週間続けると、週末に並べたときのつながりが見えやすくなります。慣れてきたら、週ごとにレンズを替えてみるのもおすすめです。

「気づけない日」が続くときに見直したいこと

練習を続けていても、夜になって「今日は何も気づかなかった」と感じる日はあります。そんな日が続くときは、次の3つを見直してみてください。

ひとつは、レンズが大きすぎないかです。「職場をよく観察する」のようなレンズは、どこを見ればいいかが決まらないので、何も拾えなかったように感じやすくなります。表の例のように、答えがひとつに決まるくらいまで小さくしてみてください。

ふたつ目は、書くタイミングが遅すぎないかです。夜寝る前にまとめて思い出そうとすると、昼間の小さな「おや?」はもう薄れています。気づいた瞬間に、スマホのメモに2〜3語だけ残しておき、夜はそれを1行の文にするだけにすると、拾えることがぐっと増えます。

みっつ目は、気づきの大きさを比べていないかです。「こんな小さなことを書いても意味がない」と思うと、ペンが止まります。気づく力の練習で大事なのは、立派な発見をすることではなく、見る場所を決めて、見えたものを残すことをくり返すことです。「今日は何も見えなかった」も、レンズが合っていなかったという立派な気づきとして書いておいてかまいません。

拾った「おや?」を、次に活かす形にするには

3つの練習で拾った「おや?」は、そのままでも自分の見方を育ててくれますが、仕事に活かしたいときは、もう一歩進めて言葉を整えておくと役に立ちます。

たとえば「Bさんが話しはじめると、みんながメモを取りはじめていた」という気づきなら、「人は、話の最初に結論が来るとメモを取る準備ができる」という学びに言い換え、「次の自分の報告では、最初の1文で結論を言う」という次の一歩まで書いてみる。この「気づき→学び→次の一歩」の書き方は、気づきの例文30選で、仕事・研修・日常の場面別に紹介しています。

また、ひとつの気づきをほかの場面にも使える形にする考え方は、気づきを学びに変える「抽象化」の記事が参考になります。自分が何に気づきやすく、何を見落としやすいかを知りたいときは、メタ認知の記事もあわせて読んでみてください。

Stockrで、毎日の「おや?」を1行ずつ残す

練習3の「1日1行」を続ける場所として、ふりかえりジャーナリングアプリStockrを使ってみるのもひとつの方法です。

Stockrは、その日の出来事や気づきを1行からストックとして残せるアプリです。書いた言葉には、求めたときにAIがひと言コメントを返してくれるので、自分では当たり前だと思っていた気づきに、別の角度から光が当たることもあります。

そして、書きためた記録は「再発見」の機能で、過去のストックが自動で戻ってきます。少し前の自分が拾った「おや?」にまた出会えるので、週末にまとめて読む時間がとれない週でも、気づきが積み重なっていく実感を持ちやすくなります。

気づく力は、ある日突然身につくものではありませんが、見る場所を決めて、見えたものを1行残すことは、今日からでも始められます。まずは明日の朝、今日のレンズをひとつだけ決めるところから、試してみませんか。

よくある質問

気づく力は、生まれつきの性格で決まるものではないのですか?

気づきやすさに個人差はありますが、人が「何に気づくか」は、そのとき何に注意を向けているかで大きく変わります。授業の録画を仲間と見て話し合う集まりに参加した先生たちが、しだいに生徒の考え方に目を向けて語るようになったという報告もあり、見る場所を決めて振り返る練習で変えていける部分は小さくありません。

毎日のレンズは、どうやって決めればいいですか?

その日の予定をひとつ思い浮かべて、「そこで何を見るか」を短い言葉で決めるのがおすすめです。会議があるなら「誰がいちばん話しているか」、接客なら「お客さんが最初に見る場所」のように、目で見て確かめられる小さなものにすると、夜に1行書くときにも思い出しやすくなります。この記事の場面別の表から選んでもかまいません。

気づいたことを書いても、仕事に活かせている気がしません。

気づきは、拾っただけではまだ材料の段階です。週末に1週間分を並べて読み、似ている「おや?」が2つ以上あれば、それが今の自分にとって大事なテーマです。そのテーマについて「次に何をするか」を1つだけ決めると、気づきが行動につながっていきます。書き方は「気づきの例文30選」の記事で詳しく紹介しています。